11、『ちょっと用事思い出したから帰るわ』
◊こんちゃっす。相変わらず屋上で時間を潰している要です。とは言っても今日は単なる暇つぶしでもない訳で、正確にはアレを見に来てんだよ。ほら、えっと、なんて言うべきなんだこのイベントは。『山本の入ファミリー試験を始めるぞ』あ、そうそう、武の入フ…
気まぐれな吹雪 第一章、平凡な日常
10、『テメェが神を見捨ててんだ』
爽やかな風が吹き抜ける屋上。そこで一人の人物が空を見上げながら寝そべっていた。エメラルドグリーンの髪が風に揺れる。太陽の光にまどろみを覚え始めたころ、静寂を破る“彼”が姿を現した。「よ、山本」「霜月……っ」視線を動かすことなく、要は寝そべっ…
気まぐれな吹雪 第一章、平凡な日常
9、『退学クライシス』
◊その日、教室内の空気は少しピリピリとしていた。それもそのはずで、今日、というよりもたった今、理科のテストが返却されるのだ。しかも担当教師は生徒いびりに定評のある根津である。点数のことが気が気ではない生徒たちの思いが蔓延していた。とは言って…
気まぐれな吹雪 第一章、平凡な日常
8、『俺と手合わせ願えないでしょうか!』
◊「砂糖地獄っ!」勢いよく起き上がるとベッドに寝ていた。いや待てなんだよ砂糖地獄って。どんな夢見てんだよっていうか何て典型的な目の覚まし方。とんでもねえ悪夢だな。向こう一週間はケーキ屋に入りたくない気分だ。「って、うわ、昨日風呂に入んないで…
気まぐれな吹雪 第一章、平凡な日常
7、『素性を知れば』
◊「霜月さん」なんか最近やたらと声をかけられるな。心の中で文句を言いながらも声のした方に顔を向ける。そこに立っていたのは不安げな表情をした沢田だった。「少し、相談いいですか……?」「……は?」†‡†‡†‡†‡†‡「変な赤ん坊に付け回されてる…
気まぐれな吹雪 第一章、平凡な日常
6、『笹川京子、俺と付き合ってください!!』
◊「んー、涼しくて気持ちーっ」爽やかな風が吹き抜ける中で軽く背伸びをする。入学してからしばらくの間はだいぶゴタゴタしたものの、それもすぐになくなり、1人の時間を作ることに成功した要はここ最近はよく朝に屋上へとやってきていた。理由は単純至極、…
気まぐれな吹雪 第一章、平凡な日常
5、『ありがたく頂戴します』
◊「霜月さん」聞きなれない声がかけられる。女の声である時点で沢田綱吉の声ではない。沢田綱吉の声でないのはいいけれど、なんだか嫌な予感のする声でもある。聞きなれないとはいえ、一度耳にした声は忘れない。そう、この声は――「長谷川、やちる」「こん…
気まぐれな吹雪 第一章、平凡な日常
4、『入学おめでとうございます』
◊『新入生の皆さん、入学おめでとうございます』12年ぶりに銀と会ったあの日からかなりの時間が経った(日にち換算でのかなりであって月換算でいえば1ヶ月程度である)。今は並盛中学校の入学式に出ている。どうにもこうにも、俺は1―A、つまりは原作メ…
気まぐれな吹雪 第一章、平凡な日常
3、『で、何これ』
◊電車とバスを乗り継ぐこと数時間。遂に並盛の地に到着した。入院している間に手続きを済ませた家に向かうために、地図とスーツケースを手に町を歩きだした。事故のケガはそれなりのもので、完治するまでに数ヶ月の期間を要した。おかげでとっくに3月には突…
気まぐれな吹雪 第一章、平凡な日常
2、『行くよ、並盛中学校』
◊軽快な目覚まし時計の音で目が覚めた。寝ぼけ眼のまま布団から手を伸ばしてスヌーズごと止めると、静かに起き上がって小さく伸びをした。「……夢、か」冬の真っ最中だというのに寝汗をかいており、パジャマが肌に張り付いて気持ち悪い。嫌な夢を見ていた気…
気まぐれな吹雪 第一章、平凡な日常
1、『霜月要、享年11歳』
◊軽快な目覚まし時計の音で目が覚めた。寝ぼけ眼のまま布団から手を伸ばしてスヌーズごと止めると、静かに起き上がって小さく伸びをした。「……夢、か」冬の初めだというのに寝汗をかいており、パジャマが肌に張り付いて気持ち悪い。嫌な夢を見ていた気がす…
気まぐれな吹雪 第一章、平凡な日常
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◊目の前に広がるこの光景はなんだろう。知っているような、知らないような、見たいような、見たくないような。あまりにも現実味がなくて、まるで、夢か物語でも見ているのではないかと、そんなことを言いたくなる気分にでもなりそうな景色だ。視界の先には、…
気まぐれな吹雪 第零章、────