気まぐれな吹雪

9、『退学クライシス』

◊その日、教室内の空気は少しピリピリとしていた。それもそのはずで、今日、というよりもたった今、理科のテストが返却されるのだ。しかも担当教師は生徒いびりに定評のある根津である。点数のことが気が気ではない生徒たちの思いが蔓延していた。とは言って…

7、『素性を知れば』

◊「霜月さん」なんか最近やたらと声をかけられるな。心の中で文句を言いながらも声のした方に顔を向ける。そこに立っていたのは不安げな表情をした沢田だった。「少し、相談いいですか……?」「……は?」†‡†‡†‡†‡†‡「変な赤ん坊に付け回されてる…

5、『ありがたく頂戴します』

◊「霜月さん」聞きなれない声がかけられる。女の声である時点で沢田綱吉の声ではない。沢田綱吉の声でないのはいいけれど、なんだか嫌な予感のする声でもある。聞きなれないとはいえ、一度耳にした声は忘れない。そう、この声は――「長谷川、やちる」「こん…

3、『で、何これ』

◊電車とバスを乗り継ぐこと数時間。遂に並盛の地に到着した。入院している間に手続きを済ませた家に向かうために、地図とスーツケースを手に町を歩きだした。事故のケガはそれなりのもので、完治するまでに数ヶ月の期間を要した。おかげでとっくに3月には突…

2、『行くよ、並盛中学校』

◊軽快な目覚まし時計の音で目が覚めた。寝ぼけ眼のまま布団から手を伸ばしてスヌーズごと止めると、静かに起き上がって小さく伸びをした。「……夢、か」冬の真っ最中だというのに寝汗をかいており、パジャマが肌に張り付いて気持ち悪い。嫌な夢を見ていた気…

1、『霜月要、享年11歳』

◊軽快な目覚まし時計の音で目が覚めた。寝ぼけ眼のまま布団から手を伸ばしてスヌーズごと止めると、静かに起き上がって小さく伸びをした。「……夢、か」冬の初めだというのに寝汗をかいており、パジャマが肌に張り付いて気持ち悪い。嫌な夢を見ていた気がす…

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◊目の前に広がるこの光景はなんだろう。知っているような、知らないような、見たいような、見たくないような。あまりにも現実味がなくて、まるで、夢か物語でも見ているのではないかと、そんなことを言いたくなる気分にでもなりそうな景色だ。視界の先には、…